仕訳帳 シート を作成していない方は先に作成してください。
この自作Excelでは
- 消費税申告
- 家事按分
- 減価償却
については触れませんので、ご了承ください。
仕訳帳自作Excelの全体像です。
このうち、今回は 月別仕入売上 シート を作成します。
なお、作成するExcelはすべてシート保護します。
仕訳帳自作Excelの利点は、必須帳票以外にも自由に必要なものを作成できる点にあるので、そのヒントとなると思います。
自作するのはめんどうなので完成品がほしい、という方はこちらからどうぞ。
青色申告決算書の2ページ目
月別売上金額や月別仕入金額は青色申告決算書の2ページ目に記入します。
月別仕入売上 シート:イメージ
月別仕入と月別売上の集計
売上金額は、勘定科目名に '売上' の文字が含まれるものが集計対象になります。
想定している勘定科目は「売上」、「売上値引」、「売上返品」です。
仕入金額は、勘定科目名に '仕入' の文字が含まれるものが集計対象になります。
想定している勘定科目は「仕入」、「仕入値引」、「仕入返品」です。
そのため、集計したくないものを集計しないよう、または、集計すべきものが対象外にならないよう、命名に気を付ける必要があります。
売上金額の集計は
= SUMPRODUCT ( ( MONTH ( [取引日] ) = [mm] ) * ( ISNUMBER ( FIND ( "売上", [貸方勘定科目] ) ) ), [貸方金額] ) - SUMPRODUCT ( ( MONTH ( [取引日] ) = [mm] ) * ( ISNUMBER ( FIND ( "売上", [借方勘定科目] ) ) ), [借方金額] )
仕入金額の集計は
= SUMPRODUCT ( ( MONTH ( [取引日] ) = [mm] ) * ( ISNUMBER ( FIND ( "仕入", [借方勘定科目] ) ) ), [借方金額] ) - SUMPRODUCT ( ( MONTH ( [取引日] ) = [mm] ) * ( ISNUMBER ( FIND ( "仕入", [貸方勘定科目] ) ) ), [貸方金額] )
式中の [ ] についてそれぞれ説明します。
[mm] は集計対象月です。4月なら '4' です。
[取引日] は 仕訳帳 シート の「取引日」列です。
[借方勘定科目] は 仕訳帳 シート の「(借方)勘定科目」列です。
[貸方勘定科目] は 仕訳帳 シート の「(貸方)勘定科目」列です。
[借方金額] は 仕訳帳 シート の「(借方)金額」列です。
[貸方金額] は 仕訳帳 シート の「(貸方)金額」列です。
「家事消費等」および「雑収入」の集計
それぞれ勘定科目が家事消費等および雑収入の仕訳を集計します。
家事消費等の集計は
= SUMIF ( [貸方勘定科目], "家事消費等", [貸方金額]) - SUMIF ( [借方勘定科目], "家事消費等", [借方金額] )
雑収入の集計は
= SUMIF ( [貸方勘定科目], "雑収入", [貸方金額]) - SUMIF ( [借方勘定科目], "雑収入", [借方金額] )
以上で 月別仕入売上 シート はシート保護をして終了です。
商品の決算処理仕訳
仕訳帳自作Excelの作成から少しはずれます。
今後、簿記3級で学習した内容にない青色申告での実務について触れていきたいと思っていますが、先に商品の決算処理仕訳について触れます。
私は商品を仕入れて販売するビジネスをしていませんが、クラウド会計を触っていて気づいた点です。
まず簿記の三分法による仕訳を復習しましょう。
前期から繰り越した商品在庫(期首商品棚卸高)は20,000円だったとすると、仕訳は
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 20,000円 | 繰越商品 | 20,000円 |
期中の売上は145,000円、仕入(当期商品仕入高)は100,000円だったとします。
期中の売上や仕入の仕訳は簿記学習の通りの仕訳です。
仕訳は省略します。
期末の商品在庫(期末商品棚卸高)は24,000円だったとすると、仕訳は
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
繰越商品 | 24,000円 | 仕入 | 24,000円 |
もちろんこれが間違いだというわけでは決してありません。
ただ、クラウド会計では決算仕訳は少し異なり、青色申告としてはこちらがおすすめです。
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
期首商品棚卸高 | 20,000円 | 商品 | 20,000円 |
商品 | 24,000円 | 期末商品棚卸高 | 24,000円 |
「商品」 は 「繰越商品」 でも構いません。
こちらがおすすめな理由は青色申告決算書の損益計算書にあるのですが、その前に三分法で仕入勘定に振り替える理由をおさらいしましょう。
これは売上原価と仕入の残高をイコールにするためです。
売上原価 =
期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
三分法で仕入勘定に集約することで、総売上から仕入残高を引くと粗利(売上総利益)となります。
売上総利益 = 売上高 - 売上原価
画像が粗くて見づらいと思いますので、説明します。
②は「期首商品(製品)棚卸高」です。(¥20,000-)
③は「仕入金額(製品製造原価)」です。当期商品仕入高を転記します。
⑤は「期末商品(製品)棚卸高」です。(¥24,000-)
④は「小計(②+③)」
⑥は「差引原価(④-⑤)」
ここまでが「売上原価」なのですが、上記計算式の要素をすべて記載して計算します。
つまり、三分法で仕入勘定に振り替えて売上原価を算出するのではなく、損益計算書上で売上原価を計算するのが青色申告なのです。
そのために、仕入勘定に振り替えずに③に単純に期末仕入残高を転記できるようにした方が、無駄がありません。
ちなみに、①は「売上(収入)金額(雑収入を含む)」、⑦は「差引金額(①ー⑥)」です。
ついでに簿記学習と違うわけではないのですが、青色申告決算書の貸借対照表への転記も説明します。
貸借対照表には、商品(繰越商品)の期末残高を、「棚卸資産」に転記します。
ただそれだけの話ですが、もう少し踏み込んで考察しましょう。
もし前期繰越を仕訳するなら
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
商品 | 20,000円 | 前期繰越 | 20,000円 |
となります。
つまり、「期首商品棚卸高」と同額が相殺されるので、「商品(繰越商品)」の期末残高は「期末商品棚卸高」と同額になります。
そのため、「棚卸資産」には「期末商品棚卸高」を転記するよう解説している人もいます。
筆者は損益計算書の勘定科目で貸借対照表の説明をすることに違和感を感じますが、、、
簿記3級レベルの知識があることを前提にしているので無意味な情報ですが、仕入は全額経費に計上できる訳ではありません。
期末に在庫になっている商品は必ず商品(繰越商品)勘定に振り分けて資産計上し、次期に繰り越してください。
これを怠ると、不正に利益を圧縮したとみなされます。
ちなみに法人の話になってしまいますが、黒字倒産の原因の1つがここにあります。
これで 仕訳帳自作Excel は完成となります。お疲れ様でした。
あとは例えば仕入先別や得意先別の分析、キャッシュフロー分析など必要な機能を自由にご自身で追加していってください。
次回は作成していない必須帳票についてなど、最終回としてまとめます。
自作するのはめんどうなので完成品がほしい、という方はこちらからどうぞ。
ご質問は下の コメントを書く からお願いします。