開業費の仕訳
開業前にかかった費用を計上できる「開業費」について解説します。
開業費とは
開業前には宣伝したり、関係者と打ち合わせるために交通機関を利用して出かけ食事したり、メールや電話で連絡を取ったり、名刺や封筒などを準備したり、いろいろ費用がかかります。
開業してからはもちろん事業にかかわる経費は各種費用科目で計上できますが、開業前は各種費用科目で計上できません。
開業前の費用は「開業費」という科目で計上します。
「開業費」と聞くと損益計算書(P/L)の費用科目のように感じると思いますが、貸借対照表(B/S)の資産科目で「繰延資産」になります。
「繰延資産」についてはのちほど説明します。
また、「開業費」と「元入金」は全く異なりますので注意してください。
開業費に計上できる範囲
開業後には事業にかかわる損益計算書(P/L)の費用科目として計上できるものは「開業費」に計上できます。
そのため、1組10万円以上のものや敷金などは「開業費」としても計上できません。
家賃や通信費など経常的支出は計上できないと説明しているサイトもありますが、それは法人の話で個人事業主は「開業費」に計上できます。
「開業費」は繰延資産、どのように取り崩すか
繰延資産について復習します。
「繰延資産」とは、本来費用計上すべきものを資産に計上し、適切に費用勘定に振り替えて取り崩すものです。
つまり最初は費用計上しないものの、最終的には費用に計上します。
「開業費」の償却方法は、「5年の均等償却」か「任意償却」を選択できます。
ほとんどの人は「任意償却」を選択すると思います。
次は「任意償却」を説明します。
「任意償却」とは
まず「償却」とは、資産から取り崩して費用勘定に振り替えて計上することをいいます。
では、「任意償却」とはいつまでに償却しなくてはいけないのでしょうか。
答えはいつ償却してもOKです。
開業初年度でも10年後でも50年後でも構いません。
では、どれくらいの額もしくは割合で償却しなくてはいけないのでしょうか。
答えは額も割合も自由です。
例えば、初年度は償却せず、2年目は10万円償却、3年目は償却せず、4年目は50万円焼却、ということも可能です。
このように、自由な額を自由なタイミングで償却できるため、ほとんどの人が節税に有利な「任意償却」を選択します。
ちなみに、「任意償却」のために税務署に事前申請する必要はありません。
「開業費」の仕訳
開業時の計上では、「開業費」は合計額を1行で仕訳しても構いません。
その場合は、内訳を税務署に説明できるように、明細を作成したり領収書を整理しておいてください。
日付は開業日になります。
領収書の日付と仕訳上の日付が異なることになりますが、問題ありません。
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
開業費 | 800,000円 | 事業主借 | 800,000円 |
償却するとき、日付は期末になります。
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
減価償却費 | 100,000円 | 開業費 | 100,000円 |
国税庁の確定申告書作成コーナーへの入力手順
国税庁の「確定申告書作成コーナー」の入力を説明します。
手書きする方などは、以下の「確定申告書作成コーナー」の青色申告書出力結果から、記載内容をご確認ください。
なお、任意償却を選択し償却金額がゼロの会計年度であっても確定申告に記載してください。
画面が切り替わりますので、「新規に減価償却資産を入力する」ボタンをクリックします。
固定資産の明細入力画面に切り替わります。
各項目の設定内容は
減価償却資産の種類等
「"繰延資産" 」を選んでください。
減価償却資産の名称
「"開業費" 」と登録してください。
任意償却を選択した場合は、「"任意償却を選択する" 」にチェックしてください。
取得年月
開業年月を指定してください。
取得価額
開業した年の会計年度に「"開業費" 」として資産計上した金額を入力してください。償却残高ではないので、毎年同じ金額を入力してください。
前年末未償却残高
開業初年度は入力不要です。
2年目以降は、開業費の、自作Excel仕訳帳でいうところの、前期繰越額を登録してください。
くれぐれも当期の期末未償却残高ではないのでご注意ください。
本年中の普通償却費
当年中に開業費から取り崩した償却費を登録してください。
注意点は任意償却で当年中に開業費からの償却費がなくても、0(ゼロ)と入力してください。
ゼロ登録の場合は、入力完了時に確認メッセージが表示されますので、正しければ「はい」と答えてください。
事業専用(貸付)割合
100と入力してください。
摘要
特に入力不要ですが、必要に応じて入力してください。
改めて説明しますが、 "任意償却" という文言は自動出力されるので入力不要です。
---------- 以上が設定内容の説明です。
ほかに減価償却費を計上する固定資産がある場合は続けて入力します。
入力が完了すると、明細行に入力内容が反映されます。
当期の期末未償却残高は入力していませんが、自動出力されます。
内訳に登録した内容は、青色申告書の3ページ目にこのように出力されます。
重要なのは、任意償却を選択した場合には「摘要」欄に "任意償却" と出力されていることです。
注意していただきたいのは、開業費に限らず減価償却資産の内訳に登録した内容は、"貸借対照表(B/S)に反映されません。
開業費の前期繰越額や当年期末未償却残高は、改めて貸借対照表(B/S)に登録してください。
今回は、今回は個人事業主の「開業費」について説明しました。
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