何十年ぶりに数学の整数問題を解いてみました。
数式の入力方法が分からず、すべて画像のため読みづらいと思いますが、ご容赦ください。
問題
(東京工業大学)
a, b, c は 1<a<b<c を満たす整数とし、 (ab-1) (bc-1) (ca-1) は abc で割り切れるとする。
このとき、 a, b, c をすべて求めよ。
解答例
(ab - 1) (bc - 1) (ca - 1) = a2b2c2 - a2bc - ab2c - abc2 + ab + bc + ca - 1 = abc ( abc - a - b - c ) + ab + bc + ca - 1
「abc ( abc - a - b - c) 」は必ず abc で割り切れるので、与式が abc で割り切れることから「ab + bc + ca - 1 」も abc で割り切れる。
よって、kを整数とすると
ab + bc + ca - 1 = k×abc ---- (1)
と表すことができる。
kのとり得る値を検討する。
c>b>a>1 のため ab>1, bc>1, ca>1 。
よって、ab + bc + ca - 1 > 1+1+1-1 = 2 > 0 のため、 k>0 となる必要があり、
kは整数なので k ≧ 1 ---- (2)。
abc > 1 > 0 (abc≠0) なので、(1)式の両辺を abc で割ると
1/a + 1/b + 1/c - 1/abc = k
であり、 1/abc > 0 。
よって(2)も考慮すると
1/a + 1/b + 1/c = k + (1/abc) ≧ 1 + (1/abc) > 1 ---- (3)
a<b<c から
1/a > 1/b >1/c
このことと(3)式より
1 < 1/a + 1/b + 1/c < 1/a + 1/a + 1/a = 3/a
a<b<c から
1/a > 1/b >1/c
このことと(3)式より
1 < 1/a + 1/b + 1/c < 1/a + 1/a + 1/a = 3/a
これと a>1 より 1<a<3 となり、aは a=2 以外の整数値をとり得ない。
a=2 のとき、同様に
1 < 1/2 + 1/b + 1/c < 1/2 + 1/b + 1/b = 1/2 + 2/b
これと b>a=2 より 2<b<4 となり、bは b=3 以外の整数値をとり得ない。
同様に
1 < 1/a + 1/b + 1/c = 1/2 + 1/3 + 1/c = 5/6 + 1/c
これと c>b = 3 より 3<c<6 となり、cは 4か5 以外の整数値をとり得ない
A) c=4のとき
ab + bc + ca - 1 = 6+12+8-1 = 25, abc = 24 となり、kが整数にならないので不適。
B) c=5のとき
ab + bc + ca - 1 = 6+15+10-1 = 30, abc = 30 となり、k=1となり、条件に矛盾しない。
よって、 a=2, b=3, c=5 。
説明
この問題はもともと(1)の誘導があるのですが、省略しました。
整数問題は積の形をつくることが、王道の解法です。
この問題はすでに積の形になっていますが、対応する式は k×abc(kは整数) となり、 a, b, c が1より大きい(すなわち2以上の)整数という条件しかないため、絞り込みは難しそうです。
同様の理由と数字が1しかないことを考えると、倍数(約数)や余りに注目するという解法も難しそうです。
そのため、残りの典型的な解法である範囲をしぼるという方針にします。
範囲をしぼる解法の注意点は、範囲をしぼることで可能性のある値を探す(必要条件を満たす)だけなので、しぼった値が題意を満たしているか(十分条件も満たしているか)を必ず確認することを忘れないようにすることです。
この問題が対称式になっている点にも触れておきます。
具体的に言うと、aをbに、bをcに、cをaに入れ替えても式が変わらないということです。
今回は a, b, c の大小関係が与えられていますが、仮に問題が大小関係に触れず、例えば「互いに異なる2以上の整数」などと記述されている場合でも、a, b, c に対称性があることに触れたうえで、自分で a<b<c という仮定を行って範囲をしぼります。
ただし、解答は a<b<c の条件をはずした組み合わせにすることを忘れないようにしましょう。
与式を展開すると、一部がabcでくくれることがわかります。
そのため、残りの項がabcの倍数となることが必要になります。
自分で文字をつくった場合は、その文字の条件を必ず確認しましょう。
今回は「kは0より大きい」を「kは1以上」と言いかえています。
無駄になるかもしれませんが、一度より厳しい条件に置き換えて検討してみてください。
両辺をabcで割っていますが、文字を文字で割ると扱いがより煩雑になり、基本的には避けたいところです。
それでも両辺をabcで割る理由ですが、今回はa, b, c の最小値は2ですが無限に大きくなり得るため、逆数をとることで範囲をしぼりやすくなる可能性があるためです。
また、 1/abc を除き、分母が文字1つだけになり、分子から文字がなくなります。
邪魔な 1/abc は不等式を使って置き換えることで消去します。
単純化できたら a, b, c の大小関係から値をしぼりこみます。
ここでは1より大きいという条件があるので、最も条件が厳しい、すなわち最も値が大きい 1/a から値をしぼりこんでいきます。
それを繰り返すことで他も絞り込んでいきます。
最後に絞り込んだ値は必要条件だけなので、十分条件を忘れずに確認しましょう。
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