何十年ぶりに数学の整数問題を解いてみました。
数式の入力方法が分からず、すべて画像のため読みづらいと思いますが、ご容赦ください。
問題
(東京大学)
n は1以上の整数とする。
(1) n2 + 1 と 5n2 + 9 の最大公約数 dn を求めよ。
(2) ( n2 + 1 ) ( 5n2 + 9 ) は整数の2乗とならないことを示せ。
解答例
(1)
n2 + 1 = adn ---- (A)、5n2 + 9 = bdn ---- (B) (a,bは整数)と表せる。
nは1以上の整数なので、n2 + 1 も 5n2 + 9 も正の整数であり、 a,b,dn も正の整数であるといえる。
(A)式の両辺を5倍して(B)式の両辺を差し引きする( (B) - 5×(A) )と、
4 = bdn - 5adn = dn( b - 5a )
となる。
よって、最大公約数dnは正の整数であることから、4か2か1のいずれかとなる。
- ① n が偶数のとき
- n = 2c (cは正の整数) とすると、
- n2 + 1 = 4c2 + 1 = 2×2c2 + 1
- 5n2 + 9 = 5×4c2 + 9 = 4(5c2 + 2) + 1 = 2(10c2 + 4) + 1
- となり、4でも2でも割り切れることはないので、最大公約数 dn = 1 。
- ② n が奇数のとき
- n = 2c - 1 (cは正の整数) とすると、
- n2 + 1 = ( 2c - 1 )2 + 1 = 4( c2 - c ) + 2 = 2( 2c2 - 2c + 1 )
- 5n2 + 9 = 5( 2c - 1 )2 + 9 = 4( 5c2 - 5c + 3 ) + 2 = 2( 10c2 - 10c + 7 )
- となり、4では割り切れないが2で割り切れるので、最大公約数 dn = 2 。
(2)
- ① n が偶数のとき
- n2 + 1 と 5n2 + 9 は互いに素であることから、 ( n2 + 1 ) ( 5n2 + 9 ) が平方数である場合、 n2 + 1 も 5n2 + 9 もそれぞれ平方数となる。
- しかし、 n が正の整数である限り n2 < n2 + 1 < n2 + 2n + 1 = (n + 1)2 であることから、 n2 + 1 が平方数となることはない。
- よって、 ( n2 + 1 ) ( 5n2 + 9 ) が平方数になることはない。
- ② n が奇数のとき
- n2 + 1 と 5n2 + 9 は共に4では割り切れず、最大公約数が2であることから、
- ( n2 + 1 ) ( 5n2 + 9 ) が平方数である場合、
- n2 + 1 = 2p2 ---- (C)、5n2 + 9 = 2q2 ---- (D) (pとqは奇数)
- と表すことができる。
- (D)式の両辺から(C)式の両辺を差し引きすると 4n2 + 8 = 2q2 - 2p2 となり、整理すると 4(n2 + 2) = 2(q2 - p2) となる。
- 両辺を2で割ると 2(n2 + 2) = q2 - p2 = (q + p)(q - p) ---- (E)
- pとqは共に奇数のため、 q + p も q - p も共に偶数である。
- よって、 q2 - p2 = (q + p)(q - p) は4で割り切れる。
- 一方、nが奇数であることから n2 + 2 は奇数である。
- よって、 2(n2 + 2) は偶数であるものの4で割り切れない。
- これらから、 (E)式は矛盾しているといえる。
- よって、 ( n2 + 1 ) ( 5n2 + 9 ) が平方数になることはない。
説明
この問題は決して難しくありません。
整数問題の代表的な解法を理解し、数式から情報をしっかり読み取れば、高い確率で完答できるはずです。
手が止まりがちなポイントに対して、どのように判断すべきかを中心に説明します。
(1)
は誘導が目的で、完答すべきであり完答できる問題です。
最大公約数を数式で表現して1文字消去する流れはよくある解法です。
この問題では 負数×負数 のパターンは考慮する必要がないので、「1×4、2×2、4×1」の3通りしかない、というところまでは問題ないでしょう。
手が止まるとすれば次の、候補となる数(4, 2, 1)を元の式に代入したあとどうしていいか分からない、となってしまうのでしょう。
そういう人は解答例をみると、「なぜいきなり奇数と偶数で場合分けしているのか?」が理解できずに、自分では解くことができないとなってしまうかもしれません。
まず、「候補となる数(4, 2, 1)で場合分けする」「元の式に代入する」という方針は間違っていません。(一文字消去の方針にこだわらなければ代入して解くことも可能なので、別解として後述します。)それで何か見えれば、そこで方針を立てましょう。本当はここで見えてほしいものがあるのですが、後述します。もし何も見えてこなければ、整数問題の代表的な解法を検討します。
- 積の形にする
- 倍数(約数)と余りに注目する
- (与えられた条件からや大小関係を自ら定義して)範囲をしぼる
そうすれば、いま最大公約数を求めているわけですから、方針は「倍数(約数)と余りに注目する」の一択になります。
しかし、 n2 + 1 を見て、「4は絶対に約数にならない」ことに気づいてほしいです。
これは平方数に 1 を足した数ですが、平方数は 3 もしくは 4 で割ったときの余りに特徴があります。
平方数を 4 で割ったときの余りは 0 か 1 なので、 n2 + 1 を 4 で割ったときの余りは 1 か 2 になり、 4 で割りきれることはありません。
あとは 2 で割りきれる、すなわち偶数になるかどうかの検討で手が止まることはないでしょう。
解答例は合同式を使っていませんが、合同式を使った方が答案はスッキリすると思います。
[別解]
<略>
- ① dn = 4 のとき
- (A)式に代入すると、 n2 + 1 = 4a より n2 - 1 + 2 = 4a を整理すると
- (n + 1) (n - 1) = 2 (2a - 1)
- 左辺は 奇数×奇数または偶数×偶数 となるが、
- 右辺は 2×奇数となる。
- よって、この等式が成立する n は存在しない。
- ② dn = 2 のとき
- (A)式に代入すると、 n2 + 1 = 2a より n2 - 1 + 2 = 2a を整理すると
- (n + 1) (n - 1) = 2 (a - 1)
- 右辺は必ず偶数となるため、
- 左辺が偶数となるためには n は奇数でなくてはならず、
- このとき(B)式も矛盾しない。
- ③ dn = 1 のときのとき、つまり a と b が互いに素のとき
- n が奇数のとき、(A)式と dn = 1 から a は偶数となり、(B)式と dn = 1 から b も偶数となる。
- これは、 a と b が互いに素であることと矛盾する。
- n が偶数のときは a も b も奇数となる。
<略>
(2)
も、整数問題の代表的な解法の理解と数式から情報を読み取ることで解答にたどり着けます。
まず、○○でないことを証明するので、背理法を使う方針を取ります。(1)の誘導があるので、偶数と奇数で場合分けする方針を立てることも誰もが行うことでしょう。
偶数の場合、(1)より最大公約数は1、すなわち1以外の公約数をもたない(互いに素)という情報があります。そのため、掛けた結果が平方数ならそれぞれも平方数であるとの条件が導けます。
この解答は主に2つのパターンのどちらかになった人が多いと思います。
「積の形にする」方針をとった場合、 n2 + 1 = s2 などとおいて n2 - s2 = (n + s) (n - s) = 1 から矛盾を指摘します。
もう1つが、直感的に n2 + 1 は平方数にならないと気付いた場合です。 n と n2 の値の推移をみると直感的に気づくことがわかります。
n | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|
n2 | 1 | 4 | 9 | 16 | 25 |
n が大きくなれば大きくなるほどそれ以上に n2 の差分は大きくなります。そのため n2 + 1 は平方数になるのは n の値が小さいときに限られますが、最小値のときですら成立していません。このことを数式で表現したものが解答例です。2次関数グラフにして直感を説明しても数学的と言えるのではないかと思います。
ここまでは原理原則だけで解答できるはずです。
奇数の場合、(1)より最大公約数は 2 です。そして 4 ではないことも確認しました。このとき、解答例では両方とも 4 が約数でないことを確認しました。もし片方のみ 4 が約数にならないことを確認しただけだとしても、偶数と同じ形にしたいと考えれば両方とも 4 を約数にもたないなら扱いやすいと感じるでしょう。これにより両方とも1回 2 で割ればそれ以上 2 で割れない、すなわち 2 で割った結果は奇数になるということです。
そして最大公約数が2である(2と1以外の公約数(共通因数)はない)ことから、掛けて平方数になるためには両方とも 2 で割った結果が平方数になる必要があります。
(1)の誘導から情報をしっかり読み取ることが重要ですが、結論だけでなくその過程からもしっかり情報を読み取りましょう。
ここで奇数だから 2k + 1 などと置き換えたくなる人も多いと思いますが、もし奇数という条件のままで済むのなら無駄に文字を増やすだけですので、何も見えてこないときに打開策を見つけるために置き換えるようにして、まずは置き換えをしないで検討してみてください。
もし、ここで手が止まるようなら整数問題の代表的な解法を検討してみましょう。もちろんこの段階で何をすべきか見えている場合はこのタイミングでなくても構いません。
- 積の形にする
- 倍数(約数)と余りに注目する
- (与えられた条件からや大小関係を自ら定義して)範囲をしぼる
このなかで、「範囲をしぼる」方針は無理そうです。
ひょっとすると一番多いのは「倍数(約数)と余りに注目する」方針をとる人かもしれません。というのも、まず(1)と同様に1文字消去して整理すると 2 = q2 -5p2 となります。このタイミングで方針を検討すると、積の形を作るのは難しいので自ずとこの方針になるでしょう。 3 で割ったときの余りでは矛盾を指摘するのは難しそうですが、 4 で割ったときの余りで矛盾を指摘できます。奇数の平方数を 4 で割ると必ず 1 余ること( p2 ≡ q2 ≡ 1 (mod 4) )を利用しましょう。
「積の形にする」のが王道のため、この方針をとったものが解答例です。上記のように1文字消去してしまうと積の形を作るのは難しいです。そこで、矛盾を指摘できればいいので、1文字消去を目的にするのでなく因数分解できそうな二乗の差を作れるように2つの式を1つにまとめます。偶数×奇数と偶数×偶数が同値になることはあり得ますが、 2×奇数 を 偶数×偶数 に因数分解することはできません。 これら以外にもいくつもの別解があるだろうと想像できます。
東大とみると身構えてしまうかもしれませんが、きちんとやるべきことをやれば完答できると思います。
ここからは完全に雑談ですが、この問題は比較的平易だと申し上げましたが、(1)の誘導がなければどうでしょうか。
私は積の形のままではどうにもならず、展開して 3 や 4 , 5 で割ったときの余りを検討しましたが、残念ながら解けませんでした。
積の形のままで互いに素と言えればいいのにな、との発想は私には思いつかないと思い、面白い問題だと感じました。
3, 4, 5といった互いに素となる自然数で三平方の定理が成立する数字を原始ピタゴラス数というのですが、いくつか性質がありその証明を確認することも整数問題の解法の引き出しを増やすのに役立つと思います。
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