フリーランスの報酬は源泉税を差し引いて支払われることがあります。
その場合の仕訳と確定申告について説明します。
消費税免除事業者であること、報酬は100万円以下を前提とします。
源泉徴収と支払調書
報酬の種類により契約元は所得税を源泉徴収することが義務付けられているためです。
徴収されるのは、(年間でなく)一度に支払われる報酬が100万円以下の場合は10.21%です。(100万円超の場合は少し複雑になります。)
契約時に、契約先に支払調書の発行をお願いしましょう。
給与所得の場合は源泉徴収票が発行されますが、フリーランスの報酬に対して発行される源泉徴収票に代わるものが支払調書だと思ってください。
契約先にマイナンバーの提出を求められると思いますが、支払調書にはマイナンバーが記載されないと思います。
これは個人情報保護のためですので、マイナンバーの記載がなくても気にしないでください。
一般的に支払調書を発行してくれるところが多いですが、最近は経費節約のために発行しないところも増えているそうです。
支払調書は源泉徴収票と違い契約先に発行義務はありませんので、拒否されることもあります。
支払調書は法定帳票ですが、契約先から税務署への提出義務があるだけです。
もし支払調書を発行してもらえない場合は、源泉徴収額を確認する方法を契約先と協議してみてください。
一般的に支払調書は翌年1月下旬から2月上旬にかけて発行されることが多いです。2月下旬に発行されたこともあるので、例外はあるようですが。
売上計上時の仕訳
売上計上は請求時になります。
請求書発行日を取引日にすればOKです。
消費税は免除されており20万円の売り上げという場合の仕訳は以下の通りです。
まずは最も一般的な仕訳です。
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 179,580円 | 売上 | 179,580円 |
事業主貸 | 20,420円 | 売上 | 20,420円 |
(注:一般的には複合仕訳で記載しますが、自作Excel仕訳帳で登録可能な仕訳の形式で記載しています。)
消費税免除業者でも消費税相当分を支払ってくれる契約先もあるかもしれません。
その場合は、消費税相当額も含めて売上計上する仕訳で構いません。
源泉税は、所得税を先払いしているのと同じですので、所得税支払いや住民税支払いと同じように仕訳します。
源泉税は経費にできないので注意してください。
ただ、この仕訳だと源泉税分が他の「事業主貸」を使用した仕訳と紛れてしまうので、私は次のように仕訳しています。
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 179,580円 | 売上 | 179,580円 |
仮払金 | 20,420円 | 売上 | 20,420円 |
これには1つ条件があり、私は「仮払金」勘定を源泉税以外で使用することがないため、仮払金=源泉税とみなす運用ができます。
もし「仮払金」を源泉税以外にも使用している場合は、メリットがありません。
補助科目を契約先にすることにより、さらに契約先ごとの源泉税も管理できます。
これにはデメリットがあり、どこかのタイミングで必ず仮払金から事業主貸に振り替える必要があり、無駄な作業が発生します。
入金時の仕訳
振込手数料を負担する場合は「支払手数料」で仕訳を起こしますが、ここは振込手数料がなかったもしくは先方もちだったとします。
源泉徴収された残額が事業専用普通口座に振り込まれる場合の仕訳は以下のとおりです。
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 179,580円 | 売掛金 | 179,580円 |
「仮払金」を使った場合の振り替え処理
「仮払金」とは、いったん支払いは済んでいるものの費目を確定できない場合に使用します。
本来は決算時までに整理しなくてはならないものです。
また資産勘定のため、クラウド会計などでは期末残高があると次年度に繰り越されます。
ずっと整理しないと毎年の源泉税が積み上がっていくことになります。
振替仕訳です。
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
事業主貸 | 20,420円 | 仮払金 | 20,420円 |
実際は1件ずつでなく総額で仕訳を起こしています。
タイミングですが、私は決算処理の1つとして期末に実施しています。
あとは繰り越して、確定申告時に前払いした源泉税が所得税に確定したと考えて振り替えてもいいかもしれません。
「仮払金」を使うことに関しては、法人では「仮払税金」などという勘定科目で源泉徴収を仕訳するので、特に問題ないと思います。
ちなみに「前払金」を使うことはおすすめできません。
「前払金」は仕入の先払いとして使う勘定科目であり、意味合いが違い過ぎるので税務署から指摘を受ける可能性が高いと思います。
源泉税の年間集計
総勘定元帳などで、年間の「源泉税」総額を集計して確認しましょう。
支払調書が発行される場合は、支払調書とも突合せましょう。
源泉税は青色申告では経費に計上してはいけませんが、売上計上していますので、何もしないと税金を二重にとられることになります。
(税金を払いすぎるミスは税務署は絶対に指摘してくれません。)
確定申告で処理が必要になるので、集計しておきましょう。
源泉税と確定申告
確定申告時に、確定申告書Bに支払調書の内容を転記します。
記載内容は、以下に記載の「確定申告書作成コーナー」の入力内容を参考にしてください。
集計した源泉税は確定申告書Bの「㊹所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額」の欄に転記します。
国税庁の「確定申告書作成コーナー」の入力を説明します。
青色申告書の作成を終えたうえで、「収入金額・所得金額の入力」画面で、「事業所得(営業・農業)」を編集します。
「事業所得の入力」画面が表示されます。
2021年度から、帳簿の種類を選択する項目が追加されていますので、そちらはこの記事をご覧ください。
account-it-dentist.hatenablog.com
下にスクロールすると(最下部近くに)「源泉徴収されている収入の内訳入力」欄が表示されます。
ここに支払調書1枚につき1件入力します。
入力例もあるので、支払調書がある場合はそれを転記していきます。
給与収入分の源泉徴収はここに入力してはいけません。
文字数が不足する場合もありますので、株式会社を(株)にしたり都道府県名やビル名などを省略するなどして文字数を調整しています。
支払調書をもらえない場合のため、入力項目を少し説明します。
- 種類: 基本的に「報酬」でいいと思います。その他には「講師料」、「原稿料」、「契約金」、「賞金」など。
- 名称: 報酬を支払ってくれた取引先の名称です。
- 住所: 上記「名称」で指定した取引先の住所です。
- 収入: 源泉税差引前の年間売上総額です。
- 源泉徴収税額: 差し引かれた源泉税の年間総額です。
- 未納付の源泉徴収税額: 基本的には記入不要です。これは(取引先の立場から)徴収できていない源泉税を意味しています。万一支払調書に記載があるようなら転記します。支払調書がない場合、支払期限を超えているのに回収できない売掛金に対してかつ売上を計上したいケースで記載するようですが、税務署への手続きがあったりするようなので、税理士か税務署の相談窓口で確認いただきたいと思います。
入力が終われば、最下部の「入力終了(次へ)」ボタンをクリックします。
これで税金を二重で徴収されることはありません。
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